著作権とは何か─その将来─
『著作権とは何か』(著者)福井健策
─感想─
著作権の入門書としては非常にわかりやすい本だと思いました。ただ、やはり筆者もあとがきで述べているように、これだけでは著作権の詳細を知ることはできません。しかし、このような読みやすい本が出版されたことで、今まで著作権に無頓着だった一般人に訴えかけるには十分刺激的な本だと思います。私達にとっては、著作権の存在を当たり前のように知っている感覚かもしれませんが、意外と一般人の方は、どの程度が著作権に違反するのかといったことはあまりわかっていないようです。
例えば、ニコニコ動画に違反コンテンツがのっていることに対して、「動画にコメントがついたことで、違うモノになったんだから、これは違反していない。自分が作ったもの」というような、間違った考えを持っている人もいたりします。
また、本書にもあったように、違反の線引きがアートなどは特にしづらいという点もあります。インスパイヤされたのだ、と言えばそれで済むことなのかどうか。ノマネコ騒動は、匿名集団がつくりあげたものであって、誰が著作権者なのかははっきりしていなかったのも問題でした。しかし、このような匿名集団によって生まれるコンテンツもこれから増えていくと思われるので、なにかしらの対策が必要となってきます。他にも、ホームビデオを撮った際、たまたま紛れ込んだテレビ画面やBGMが入っていたらこれは違反なのかどうか、音楽によくあることですが、一部分のフレーズがたまたま似ていた場合どうなるか……など、このような曖昧な部分もさらに議論をつめていかなくてはならないでしょう。 また、動画サイトの有人監視を考えた場合、プラットフォームを提供している側が全ての違反・無違反をコントロールしてもいいのか、ということも最近考えます。明らかな違反ならまだしも、上記のような故意に違反をしていない場合、著作権者が訴えているわけでもないのに、勝手に動画の削除をしていいのかどうか…。
あと一点、欲しかった章はクリエイティブ・コモンズについてです。インターネットの普及により、著作権違反の問題も多く発生していますが、情報共有をしやすいように生まれたクリエイティブ・コモンズは重要なプロジェクトだと思います。 ただ、CC≠著作権放棄です。この点もなかなか認知されていない点のように思えます。
─議論点─
・クリエイティブ・コモンズの現状と課題と将来。(コンテンツによって向き・不向きなどはあるのか、CCがいまいち普及していないのはなぜか)
・完璧に違反と違反でないものを線引きすることは難しいが、これを解決する方法はないのか。また、誰がその線引きを行うのか。(場を提供している人、著作権者、etc)
(※法廷に持ち込む前の、動画アップ時に行われる判断としてということです)
・著作権の仕組みはこれからどのように変わっていくのか(年数延長、登録制など)
・JASRAC等の著作権管理業者が存在することのメリットとデメリットはなにか(JASRACは本当に悪だと言い切れるのか?)
・クリエーターが権力の持つ側とのパワーバランスによって、ライセンスを取得できないという状況の改善方法はないのか
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