パラダイス鎖国の感想
本書を読んで、いろいろとキーワードや名付けがされていておもしろいという第一印象を受けた。特に本の最初から最後までよく使われていた「混沌」に関しては、混沌から抜け出すことを恐れるなと書いてあったが、混沌から抜け出すには多くの力が必要ではないかと思った。中国の故事で混沌という皇帝の顔に一日ずつ目、鼻、耳の穴を付けていったら7日後には皇帝が消えていなくなってしまったという話を思い出した。本書に多い名付け・キーワードもある意味で、混沌から抜け出すための手段であったと思うが、この場合短い単語でも、パワーを持っていなければ「キー」ワードにならない。よって、目や鼻を顔のどの位置に置くのかも重要だし、そもそも目・鼻・口を選ぶということ自体が大変なことかもしれない。
著者は、ゆるやかな開国を、一般の人の意識レベルでの変化によってと提唱しているが、それが混沌に穴をつける作業だったら、一般人のゆっくりとしたスピードで行なうのは難しいことではないかと感じた。人の意識というものは大きなイベントがない限り急に変わることはないと思うし、いま在る意識というものもゆっくりと培われてきたものだからだ。これを小さな団体で行うには一人の小さな変化が大きく影響・反映すると思うが、国レベルで行うとなると理想でしかなく、メディアなどの即効性があり影響力をもつモノの力が必要なのではないかと思った。
そもそも、私は外国より国内という内向思考を持っていないし、そこまで周りも外国より日本を選ぶという傾向が強いとは感じない。しかし、著者の言うようにマイノリティーの数が大きくなっているとして、それが「もったいない」のであるならば早期の治療が要ると思う。確かに、産業に関して、日本の製品が日本で完結しているというのは「もったいない」と思う。例えば日本のデジカメは、外国では評価が高く、受容があるようだ。もしこれが、外国からの開国要求があれば日本は動くというスタンスだとしたら、江戸時代の本当の開国から何も変わっていないのかもしれない。日本のこの体質はよき文化でもあり、「もったいなく」もあると思う。