2008-04-09

パラダイス鎖国の感想

 本書を読んで、いろいろとキーワードや名付けがされていておもしろいという第一印象を受けた。特に本の最初から最後までよく使われていた「混沌」に関しては、混沌から抜け出すことを恐れるなと書いてあったが、混沌から抜け出すには多くの力が必要ではないかと思った。中国の故事で混沌という皇帝の顔に一日ずつ目、鼻、耳の穴を付けていったら7日後には皇帝が消えていなくなってしまったという話を思い出した。本書に多い名付け・キーワードもある意味で、混沌から抜け出すための手段であったと思うが、この場合短い単語でも、パワーを持っていなければ「キー」ワードにならない。よって、目や鼻を顔のどの位置に置くのかも重要だし、そもそも目・鼻・口を選ぶということ自体が大変なことかもしれない。

 著者は、ゆるやかな開国を、一般の人の意識レベルでの変化によってと提唱しているが、それが混沌に穴をつける作業だったら、一般人のゆっくりとしたスピードで行なうのは難しいことではないかと感じた。人の意識というものは大きなイベントがない限り急に変わることはないと思うし、いま在る意識というものもゆっくりと培われてきたものだからだ。これを小さな団体で行うには一人の小さな変化が大きく影響・反映すると思うが、国レベルで行うとなると理想でしかなく、メディアなどの即効性があり影響力をもつモノの力が必要なのではないかと思った。

 そもそも、私は外国より国内という内向思考を持っていないし、そこまで周りも外国より日本を選ぶという傾向が強いとは感じない。しかし、著者の言うようにマイノリティーの数が大きくなっているとして、それが「もったいない」のであるならば早期の治療が要ると思う。確かに、産業に関して、日本の製品が日本で完結しているというのは「もったいない」と思う。例えば日本のデジカメは、外国では評価が高く、受容があるようだ。もしこれが、外国からの開国要求があれば日本は動くというスタンスだとしたら、江戸時代の本当の開国から何も変わっていないのかもしれない。日本のこの体質はよき文化でもあり、「もったいなく」もあると思う。

2008-04-06

パラダイス鎖国を読んで


 さらっと読みやすい本ではあるが、キーワードが多い本でもある気がした。
「パラダイス•鎖国」「厳しい•ぬるま湯」のように、一見対立するような単語を合わせる言い回しは、とても印象的だし、的確に事象を捉えている表現だと思った。
 この本は様々な捉え方ができる本であるが、筆者が最も伝えたかったのは「このままでは日本はまずい」ということだと私は思う。
 先日、「日本のODAが5位に転落した」というニュースがあったhttp://www.asahi.com/politics/update/0403/TKY200804020372.html?ref=goo
 それとともに、BBCの国際世論調査では「世界に好影響の国として、日本とドイツが首位」ということが発表された
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/7324337.stm

 つまり、日本の国際競争力は落ちているが、未だ世界に対する影響は強く
「まだ、立て直しができる」時期だと思う。パラダイス鎖国のp.116では
「いまの日本なら、新しいものを作り出すための途中の無駄やコストを負担する余裕がまだある。その余裕すら失ってしまう前に、新しいものを作り出すための一歩を踏み出すべきなのだ。」とある。

 今の日本に必要なのは、何なのであろうか?
パラダイス鎖国で言及されているように「新しいグローバル化の公式(コンテンツ産業などの新た私意分野)」「厳しいぬるま湯」「ゆるやかな開国」は最もであると思う。
 それと共に、その全ての事象の根本にある「日本人の精神を」再度見つめ直す機会が必要だと思う。
日本人の精神って何ぞ?と思われると思うが、よく「褒める米国、けなす日本」という言葉を耳にしないであろうか?
http://news.goo.ne.jp/article/nbonline/business/nbonline-149475-01.html
日本人は、高度経済成長したときも、子供を教育するときも、現在の仕事でも
「危機感」によって動かされていることがとても多い気がする。つまり、「危機感駆動型」の日本と「希望駆動型」の米国と言い表せることができると思う。。パラダイス鎖国には、日本
もアメリカも「パラダイス鎖国」の状態になった、と言及されているところがあったが、同じパラダイス鎖国でも、至った経路(精神的思考)が違うと思った。
 日本人の「危機感駆動型」は、高度経済成長時代にはとても有効ではあるが、現在では「希望駆動型」をより強く意識していくべきだと思う。イノベーションが置生じやすいプラットフォームを社会全体で創造していくべきなのである。。。

 始めの話にもどるが、私は『「パラダイス•鎖国」「厳しい•ぬるま湯」のように、一見対立するような単語を合わせる言い回しは、とても印象的だし…』と書評した。
私の考えすぎかもしれないが、「希望」と「危機感」を感じさせる単語を、一つのキーワードに融合させる筆者の作風には、「日本には、希望と危機感をよりよいバランス(融合)させ使っていくべきだ」というニュアンスを含蓄させていたのではないか?と読み終えた最後で思ってしまった。みなさんはどう思いますか?そんなところで感想を締めくくります。